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フィールドスピーカー/真空管アンプ/特注品コーナー
サウンドパーツ開発部品(グリッドチョークなど)/『WE300Bを作る』を別ページに独立@〜D連載中

資料室→→往年のアンプ回路から学ぶ

この資料室では
・プロ機器の真空管アンプ回路図
・サウンドパーツ製作アンプの回路図
・サウンドパーツがアンプ設計や専用部品開発のヒントを得た回路図と背景
・その他あまり公開されていない興味ある図面・画像・サウンドパーツで機器から起こした回路図
 ――などを順次掲載します.


 米国ウエスタン・エレクトリックやWESTREXのアンプの回路図の多くは資料が公開されていますが、ここではメインテナンスを通じて提供された回路図を転載致しました。他の回路図はドイツから入手したものやお客様からご提供頂いたものです。
 誠文堂新光社/浅野勇氏著/監修の「魅惑の真空管アンプ正編・続編」とラジオ技術の各誌から許可なく一部回路図を転載させて頂いておりますが、真空管アンプのヒストリーをご理解頂くには格好の著書でもあります。
 今ご活躍の著者の製作記事のコピー製作に走る方が多い昨今、それらとは異なる見地から今後の真空管アンプのご研究を促すという意味でお役立て頂ければと思います。



・シングルアンプの出力管にグリッドチョークを用いる例

シングル出力段にグリッドチョークを用いる例は浅野勇著「魅惑の真空管アンプ」の巻頭/古典回路解説に複数の例が紹介されています。グリッド電流の流れ易い古典3極管のグリッド回路には直流抵抗が小さくてインピーダンスの大きなグリッドチョークが必須と云えますが、それは高価で当時は特性面でも期待できなかったドライバートランスよりも小型さとコスト面で優れていたのでしょう。RCA50/250のようにグリッド抵抗10kΩ以下との制約があるように3極管はグリッド電流が流れ易いもの、直流抵抗の低いグリッドチョークは大切な古典3極管に必須とも云えます。WE300Bは比較的グリッド電流が流れにくい球ですが、メーカー発表データに疑問があるのは2A3で、Max0.5MΩを鵜呑みにして設計すると、時には100kΩでもグリッドに2V以上が発生、最悪の場合は電流が増え続けてバイアス値が下がる悪循環を起こしてプレート電流の暴走となり、プレートが赤熱するものもあります。
 グリッドチョークはグリッド電流そのものは防止できませんが、直流抵抗の少ない分だけバイアス電圧に影響が無いので暴走には至りません。
 下記のうちHMVアンプの応用例はプッシュプル用のプレートチョークから位相反転している例で、実に巧妙ながらもグリッドの保護と言う点からは意味が無く、採用を躊躇します。プレートチョークの利点は電源電圧が低くても十分なプレート電圧が得られる、ひいては大きな利得も得られることで、グリッドチョークを併用すると再生周波数の両端が落ちる場合がありますから、併用は十分測定をしなければ失敗します。
 それにしても浅野勇氏は多くの文献から数限りない回路に深い洞察をしておられたに相違ないのですが、「魅惑の真空管」では真空管の使用例だけに的を絞っておられます。著作書の目的からはそれも仕方ありませんが、古典的アンプ全体の回路回析や、それら資料の公開と研究成果も発表して欲しかったと思います。旧いものの中にはコストの制約を受けずに凝った回路のものも多く、それも「ひとつのロマン」であり、技術者の苦労が偲ばれます。
 サウンドパーツの回路は「シンプル・イズ・ベスト」を標ぼうしていますが、もし次々に新たな真空管が開発登場する時代に生まれていれば多分同じコトをして真空管を徹底活用するとか、「これでもか!」的回路の遊びも楽しんだでしょう。現代は例えば出力トランスなど格段に良い特性のものがあるので、入力信号に対してアンプは如何に「増幅する電線」に徹するか…が大切と考えており、その意味でピュアオーディオに徹するという原点に常に位置したいのです。


出力管に多極管を用いてグリッドチョークでさらに大きな利得を得る
  ※この回路図ではアンプ全体のアースが漏れています

    



タンノイ(あのTANNOY?)での例でAFTと記すもののグリッドチョーク・スグにコピーを作れるアマチュア志向の回路 

    

     


マーシャルのアンプでは入力段にも出力段にもグリッドチョークを入れています 

   
   



HMVのPX25プッシュプルはドライバー段プレートチョークで位相反転⇒PX25の贅沢なアンプの例は下記のDECCAに軍配!
 
   



サウンドパーツが出力管にグリッドチョークを用いるきっかけとなったDECCAのPX25プッシュプルアンプ 

 このコンソールは大変豪華な作りで、中でもチューナーの周波数切替のイルミネーションは電源オンと共にウットリ見とれる素晴らしさです。今となって惜しいのはアナログが10インチ盤しか使えないことです。勿論回路も技術の賜物として外観に負けていません。
 フォノ入力トランスの2次側からイコライザー回路を経て出力段に至る見事なまでの全段プッシュプル構成。増幅はL63(J5)に統一してメンテを容易にし、出力管PX25にグリッドチョークを使用しています。PX25のグリッドがグリッドチョークによって磁気結合していると、前段までの信号は出力管の両グリッドに同じ振幅で与えられ、同時に貴重なPX25もグリッドチョークの小さな抵抗値によりグリッド電流が原因の暴走から保護できます。グリッドチョークに抵抗を並列に入れているのは低域時定数が不安定になるのを回避する目的で、大きなヘンリーのグリッドチョークは超低域が不安定になりがちなので低域端を抵抗値で調整したものです。

    



・同じくダブルプッシュプルWE133Aパワーアンプの回路…コレはグリッドチョークとは無関係のWプッシュの例です

    

 WE133Aアンプは電源部が別体のミキサー内蔵用アンプですが、軽度のNFBも掛けて2020KHzを保証、WE124系と同じ出力トランスをわずか8Wのアンプに奢り、内部配線材ひとつを取り上げても大量に作られた124シリーズのどれとも比べものにならないコストの掛け方、1086と同じパラフィン含浸綿巻線と内容にこだわっています。
 余談ですが、よく見ないと回路図だけではお気付きにならないでしょうが、かの有名なWEのカップリング用オイルコン(例の縦長の35_×10_×80_H程度のアレです)NFBには用いられているものの、カップリングは0.03μFのマイカです。同様に129ラインアンプでもカップリングはサンガモ辺りの小型オイル、前述の角ばったWE製コンデンサーはNFB回路で、察するにWEは音質的にはあのコンデンサーは採用したくなかったのかも知れません。86型は採用しているのですが。
 133Aは出力管は349A、個人的にはWEアンプ中で最も音質面で優れる好ましいアンプと思っています。ホールトーンを重視するアンプ群の中でも端正で情報量も多く、まさにモニターたる性格です。124シリーズのように社内QC運動によりビス1本から部品に至るまでコストを重視の時代が到来し、アンプそのものもPA向けになって行ったのとは一線を画します。ただテレフンケンV69と同様インプットトランスを使用して(このアンプのためだけに618Bインプットトランスは2次側にセンタータップが在ります)のダブルプッシュ方式は600Ωの伝送系が可能なプロ機では簡単でも一般的なプッシュプルアンプへの応用は不可能です。そこでサウンドパーツでは<入力反転チョーク>を開発する道を選んだのです。グリッドチョークならインプットトランス固有の音質面での色づけや特性の影響はほとんどありません。ちなみに入力反転チョークは1:12巻線ファイラ巻きのトランスと原理は同じですから特性は極めて優秀、いわば1次側の無いトランスです。オーディオ自作派にはコイルを嫌う向きもありますが、マイクロホンやMCカートリッジからスピーカーに至るまで音響はコイルのお世話にならずして増幅系を構成できません。その意味ではコンデンサーも然りで、直結アンプにこだわってもスピーカーのネットワークやイコライザーにはコンデンサーを使わない訳には行きません。
 プッシュプルアンプの位相反転をP-K分割型とかリークムラード型で片付けようとすると、真空管の微妙な特性差や経年変化を考えると、その動作は見かけの「安直」さとは程遠い調整が必要な難しいものだと言わざるを得ません。
 133A
アンプやテレフンケンV69の音質を聴いてこの回路の音の良さを知ると、今更ながら現代アンプのほとんどに採用されているプッシュプル反転回路は考えたくなくなり、あのキレの悪さとか平板な音の原因ではないか?との疑いがあります。NFBに「おんぶに抱っこ」で誤魔化しているのがP-K分割/リークムラード反転回路とも云えます。
 デッカ<デコラ>の出力段グリッドチョークの働きとか多極管のUL接続の持つ裸特性の良さまで考察を進めたとき、当店のプッシュプルアンプに採用する『完全バランスプッシュプル』に帰結するのは自然な流れ…と云えます。


ここにWE1126Aラインアンプを追記します。回路的には133Aを更に理想的に追究したと云えますがパワーアンプではないところが残念です。回路図では見辛いのですが2段目にはプッシュプル用グリッドチョークを用いて、初段5極管による(極論すれば上下の出力が必ず狂っている)プッシュの信号出力をグリッド「磁気結合」によって再合成、グリッドチョークのみが可能です。
 蛇足ですが、アンプと云えばオイルコンばかりのプアな電源と、3極管シングルアンプ至上主義の方には考え付かない回路構成なのが133A1126の構成です。WE至上主義でもあるそれらの多くの方々は、133Aなどの魅力有る音質を確認や想像することも無いままご自分に都合の良いアンプのみをピックアップします。時代と共に進化するWE本家そのものの回路追究精神は無視することが多いのです。当時どのようなパーツや部品が作られたか(電解コンデンサーの例のように)時代考証的な発想と並行して真空管の発達と回路を考察する必要があり、そこから音質を想像するのも愉しいことです。

   



・プッシュプル出力トランスのB/センタータップに直列に<センターチョーク>を挿入した例。
 <Loveシリーズ>パワーアンプの全て採用しているのが出力トランスへの「センターチョーク」です。ここに掲載しているのは数多い例の中でも余りに有名なアンプ、使われている真空管そのものも憧憬の的です。 
でもこの「センターチョーク」回路を採用したアンプは近年発表例が無く、まして過去のメーカー製品には全く採用された例がありませn。
 サウンドパーツのこの回路に関する考え方は次の通り、チョークの動作解析の詳細は避けますが「素人的」と一笑に付して頂くことは勝手でもこの方式の採用での音の変化は笑えません。WE古典機共通のこの回路、解析結果を教えて頂ければ嬉しく思います。
 出力トランスは当然その特性の範囲で1次で作られた信号を2次側に変換します。ただ電源側にはコンデンサーが控えており、B+回路に回り込んだ音声信号を交流的に接地すべきそのコンデンサーとの間で低域時定数が発生します。その意味で電源はリップル低減だけが目的ではなく十分低い時定数でキレイな直流を送ってくれなければ出力トランスで発生した限界低域よりも上の周波数をも一部コンデンサーで接地してしまいます。シングルアンプでは出力トランスのDC抵抗値と電源部の出口のコンデンサーとで低域時定数が成立しますので、トランスの抵抗値が大きいか電源出口のコンデンサーを大きな容量にすればトランスの特性通りの低域が出力されます。
 一方プッシュプルトランスはどうでしょうか? 旧来のトランスによくある「単巻き」では巻き始め(仮にP1)と中点(B)との間の抵抗値は中点と巻き終わり(P2)の間との抵抗値よりも小さく、電源出口のコンデンサーが十分大きければOPTの巻線抵抗値の差とでシングルと同じように低域時定数が成立します。一方オイルコン時代のコンデンサー容量そのものが大きく取れない時代には、周波数特性の良い25H程度のチョークをOPTのセンタータップとコンデンサー間に入れることで先ほどのOPTの抵抗差にチョークの抵抗を加えて、低域時定数を再生周波数の低域側に影響を与えない数値にまで追い込んだのです。その後WE86アンプからは電解コンデンサーが採用され(8本が林立します)、容量値が大きく取れることになって低域時定数が容易に下げられ、センターチョークの必要性がなくなったと思われます。
 現代トランスの多くはファイラ巻きつまり複数線並列巻きで、P1B+〜P2間に直流抵抗の差はほぼ皆無です。トランスは電源との関係において「フロート」しています。これも考え方としては正解のひとつだと思います。ただヒアリングでは良いコアのトランスを持ってきて十分低域は出るものの低域の楽器の奥行き方向の定位感があまりイメージできません。これは半導体アンプは勿論、真空管のNFBアンプを常用している方には理解してもらいにくい現象です。それらのアンプでは楽器の音も人の声もスピーカーにベタッとして離れず、ステレオは左右の分離だけで奥行き方向の「定位感」が希薄です。
 でも前述のようにここをセンターチョーク式として周波数特性に優れたチョークをセンターに付加して電源との時定数を確立すれば低域のシッカリ感が違ってきます。どなたでも聴けばドラムやベース、ピアノの左手に奥行方向の音像定位が明確になるのが判ります。従って意識して電源部との間で低域時定数を作ったプッシュプル回路も成立する訳で、その良い例がWEの古典回路だと考えます。<Love One>に採用のトランスはイマドキの市販品には珍しくなった「単巻き」ですが特性面では優れていますので、回路にセンターチョークを加えています。奥行きの定位表現も十分でこのファイラ巻き全盛時代でによくぞメーカー(橋本電気)が作ったと思います。
 一方<Love Three>ではOPTのファインメットに対し、高価な100ミクロン・コアのセンターチョークを使用し、ファインメットと音的には絶妙の組み合わせとしています。低域の性格を在来のプッシュプルアンプのやや甘い音質から高域では滑らかさを、全体では立ち上がりの鋭さとスピードのあるものとしています。それゆえにエコー感も奥行き表現も有るのです。全ては下記回路に代表され、WE86型までほとんどのプッシュ、さらには99/100(高圧アンプでオイルコン電源ゆえの処置)に至るまでWEがこだわり続けた「センターチョーク方式」の賜物です。
 ただ、サウンドパーツの方式では多極管ウルトラリニア回路にセンターチョークを採用した結果、A級動作を超えて働こうとすると信号の大小で当然電流値が変化し、その結果センターチョークはチョーク本来の脈流を排除する方向に動作します。つまり定電流回路として動作しますのでA級動作範囲を大きく取り、<Love Three>ではもっと大きなパワーを欲するときにはチョークをショートAB級への変えられるスイッチを付けています。またE130Lではスクリーン電圧が最大250Vとの制約があるのでチョークは2コイルファイラ巻きの高級品で、同一信号でプレートもスクリーンもスイングしないと正しく動作してくれないことを確認、この方式の採用は試作段階で大変苦労しました。


 <回路図中のL1がセンターチョークです>
   


 <回路図中のL1=136-A.Retがセンターーチョークです>
   


 サウンドパーツの現行製品の基本回路
 この回路の優位性をご認識頂きたいためにルル述べてきたのが正直なところです。
リークムラード型プッシュプルやP/K分割回路しか知らない方にはこの音質を予想すらできないと思います。
 前述のWE133AやテレフンケンのV69アンプではでは音質的に優れていても業務用のアンプとして主に600Ωの伝送系に対応するように作られているのは仕方ありません。
 これをサウンドパーツのプッシュプルアンプでは、ごく一般的な家庭用オーディオのプリアンプ等どのような出力に対しても幅広い入力インピーダン特性をもつ『入力反転グリッドチョーク』としていることが大きく異なります。この方法は過去に全く採用された例が無い点ではサウンドパーツの『特許』とも言える使用法ですが、いまどき高い特許申請をしても真空管アンを売ってそのコストが回収できるものでもありません。
また3極管を使ったWEアンプだけが採用した『センターチョーク』を多極管ウルトラリア接続でも使っています。従って回路ではAクラス動作領域を広げないとパワーが取れません。センターチョークは「定電流回路」で、大パワー領域に入る信号に応じて電流が変化するAB1級での設計は無意味なのです。
 下記したサウンドパーツの基本回路図では、出力段プレートから初段カソードへのFNBの例も記入していますが、
これは製品では採用していません。でも現代スピーカーで軽度のNFBも必要と考える方のために加えておきました。近年は出力トランスの2次側から初段へのNFBがほとんどですが、ダブルプッシュでは上下のプレートから直接初段のカソードにNFBを掛けます。WE133Aのように直流カット用のコンデンサーを用いず、ごくわずかに電流も返すことで周波数としては0HzからNFBを掛けていることになり、初段のバイアスの変化が無いように設計します。DCカットのコンデンサーを入れないことで信号回路との低域時定数の干渉を無くすことが出来ます。
 飽くまで下図はあらゆる要素を織り込んで記しているだけで、多極管でもウルトラリニア回路の特性は抜群ですからNFBの必要はありません。初段のグリッドや入力反転チョークのCTタップ〜アース間に入る抵抗の意味はココでは解説を略します。
 この回路を見て音質が悪いハズが無いとはお考えになりませんか?
出力段のUL接続では多極管の性格が極めて3極管に近くなります。シングルアンプでも初段/出力段に3極管を用いた2段アンプは多少ラフな設計をしても歪みは少なく設計出来ますから、プッシュでも全2段構成は大変有利です。しかもそのようなシングル2段構成を『水面に映したような』プッシュプルとすることで、どの段を見てもプッシュによる歪みの打ち消し効果があるのです。実際には音を良くするためのノーハウは更に有るとはいえ、誰が作っても失敗しない回路にはそれぞれの真空管・出力トランス・電源の構成・採用部品の音質がより濃く反映されて当然です。つまり全ての部分「本当の」音がモロに出てきます。回路による欠点に隠されいた多くの要素が音に反映されるのです。

 <※の抵抗はNFB用で当店製品には採用しませんが、どうしてもNFを掛けたい方のためのご参考です>

   

 今後はマッキンやマランツの回路例などの回路図を掲載て行きますのでご期待下さい

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